横糸でつながるボランティア教室をめざす「横浜市つづきMYプラザ」

11月10日、「平成27年度日本語ボランティア合同研修会」のため「つづきMYプラザ」にお邪魔しました。研修会終了後、お茶をいただきながら、林田館長に「つづきMYプラザ」の各ボランティア教室との関係性、さまざまな活動についてお話を伺うことができました。

 

■毎月の「日本語ボランティア連絡会」会議で、ボランティア教室の横のつながり強化

図1 日本語ボランティア連絡会と「つづきMYプラス」の関係図

 

「つづきMYプラザ」は、6つのボランティア教室間の情報共有を目的に、平成20年に日本語ボランティア連絡会を結成しました。それ以来、毎月1回代表者による会合を持ち、単なる情報共有に終わるのではなく、「共に行動する連絡会」を目指して活動しています。たとえば、各教室で学んでいる学習者情報も、できるだけ共有するようにしています。学習者の中には、「時間があるし、もっともっと勉強したい」と、いくつものボランティア教室に通っている人がいますが、そうした情報もその団体内でとどめるのではなく、全体で共有するシステムになっています。

 

研修終了後、林田館長とご一緒に

研修終了後、林田館長とご一緒に

毎月定期的に集まることで、ほぼリアルタイムに近い状態での情報共有、さらには共同して活動を企画することも可能になります。活動としては、たとえばボランティア入門講座やブラッシュアップ講座の開催、教材開発があります(教材開発をしているボランティア教室はたくさんありますが、ここでは連絡会がまとめ役となり、各ボランティア教室で分担して作成していきました)。

 

今回、研修の依頼に見えた時にも、林田館長は研修会での3つのテーマを提示され、「これはボランティア教室の皆さんが考え、絞り込んだ内容です。限られた時間ですが、できるだけ全てを扱っていただきたいのですが・・・」と切り出されました。そのテーマとは、1.『できる日本語』の活用法、2.新しく活動を始めるボランティアに対する指導の心得、3.学習者が初級から中級へ移行するときの教え方、以上3点でした。

「これを2時間で・・・」とは思いましたが、皆さんの熱い思いを考え、できるだけ現場の課題を埋め込んだ内容にしていきました。

 

 

■地域とつながり、「居場所づくり」をめざす!

都筑・ボツワナ交流児童画展

都筑・ボツワナ交流児童画展

 

林田館長が「地域日本語支援ニュース こだま」(AJALT 第202号 2012.1.12)に、書いていらっしゃる「プラザの信条」をご紹介しましょう。

 

.地域情報は雑談からキャッチしよう。立ち話は大切である。

.「支援する」ということは、私たちが「学ぶこと」でもある。

.何かを見る時は一方向からではなく、せめてニ方向から見よう。そうすれば違うものが見えてくる。

.私たちは、地域の扇のかなめになろう。

都筑・ボツワナ交流児童画展(活動は、さらに続いて行われました)

都筑・ボツワナ交流児童画展(活動は、さらに続いて行われました)

.外国人には母文化の誇りを、青少年には「ありのままでいい」ということを忘れないでほしい。そんな思いを私たちは持ち続けよう。

.利用者だけではなく、私たち一人一人の思いも大切にしよう。

 

こうした思いから、プラザ内でやっている4つのボランティア教室(6教室のうち、2教室はプラザ外での実施)の学習者とは、声をかけ合い、常に「顔が見える関係」を作っています。また、学習者だけではなく、ボランティアさんとも同様です。気軽に立ち話ができ、自分の思い・悩み・課題を語り合えるような場づくりを目指しています。

 

「こだま」の記事は、こうした言葉で締めくくられていました。

人には「居場所」が必要です。「居てもいい」「居心地がいい」と感じることが

できる場所は、子どもにも大人にも、もちろん外国人にも必要です。自分自身

が認められるということは生きていくうえで必要なことです。異分野を併せ持

つMYプラザは、それ自体が「つながりの象徴」であり、つながることで得ら

れる力を感じながら居場所づくりを進めています。そもそも「居場所」とはそ

の人自身が感じるものであり、作り手が「ここは居場所です」と言いきれるも

のではありません。でも一人でも多くの市民に、つながることで作られたこの

場所を、「居場所」と感じてほしいと願っています。

 

 

■地域のボランティア教室の協働による「リソース型生活日本語」作成

 

リソース型教材

リソース型教材

お別れ間際、「去年、こんな教材も各ボランティア教室が集まって、役割を分担して、作ったんですよ。リソース型生活日本語ですから、駅、病院、区役所などいろいろな所に行って写真を撮ってきました。地域社会の暮らしに合ったリソースであることが大切ですよね。そして、会話文を考えては話し合いを……ということの繰り返しでした」とおっしゃりながら、たくさんの教材を見せてくださいました。

 

これを作るにあたっては、まずはリソース型教材開発の専門家の方の講習を受け、その後、「自分たちが関わっている学習者の方々にとって、いったい何が必要なのだろうか」という議論を重ねていきました。それぞれ生活に直結したテーマであり、いきいきした会話が

学べるようになっています。

 

テーマ:電車・バス、郵便局、スーパー、美容院、ガソリンスタンド、

区役所、クリーニング屋、銀行、子どもの教育機関

 

リソース型教材

リソース型教材

これからの課題は、できた教材をどのように教室で活かしていくかであり、またテーマを増やしたり、広げたりしていくことですが、きっと年月をかけてさらに良いものが出来ていくことでしょう。

 

 

■ボランティア養成講座は、自分達で企画・運営

 

大きな特徴の一つとして、ボランティア教室が協働して、養成講座を企画・運営していることが挙げられます。ここでは、講師もすべてボランティアさんが行っています。以前は、ベテランの外部講師を招いての講座でしたが、「地域日本語ボランティア教室には、その地域における特徴、課題があり、それを把握しておくことが大切だ」と考え、方向転換をしました。

 

リソース型教材

リソース型教材

3日間の養成講座は、今年も10月に行われましたが、なんと広報開始後3時間で満席になってしまったそうです。それだけニーズがあり、関心の高い人が多いということの表れですが、林田館長は、「参加者はとても熱心に参加してくださいます。3日間とも座学だけではなく、各ボランティア教室の見学を実施しています。講座終了後の定着率が大切なのですが、これもなかなか良い数字が出ています」と語ってくださいました。

 

♪     ♪     ♪

 

インターネットで見るとhttp://area-info.jpn.org/area141186.html、都筑区民の平均年齢はとても低く、人口流入が続いているそうです(2010年の統計では、都筑区=38.96歳。全国1位=63.46歳、最下位=37.66歳)。こうした活気ある町に、散在して生活する外国の方々にとっては、「居場所」を見つけることが難しい場合も出てきます。同じ出身国・地域の方々と出会う機会も少なくなることも予想されます。そうした中で、地域全体で「自分たちの仲間」として共に行動していく姿勢がとても重要です。

 

地域ボランティア教室といっても、それぞれの地域社会が持つ特性、歴史、時代の流れによって、そのあり方も大きく異なります。今回「つづきMYプラザ」の研修を通して、また一つ個性豊かな連絡会の活動を知ることができました。

帰りに、廊下にあるたくさんの掲示物の中に「都筑・ボツワナ交流児童画展」関連のポスターを見つけました。こうした小さな種が「大輪の花」への一歩なのだと改めて思いながら、プラザを後にしました。

 

 

 

 

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